Our Favorite Books of 2021

2021年も残すところ僅かとなりました。

今年も取り扱いタイトルの中から店主が特にピンときた作品集をセレクトいたしました。例年通り個人的視点から選出していますが、コメントもつけておりますので年末の空き時間にお楽しみいただけますと幸いです。

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SOUKHOS by Raphaël Barontini

「LVMHメティエダール」が主催する「LVMHメティエダール研修プログラム」の成果物のひとつとして毎年制作されているアートブックシリーズより、2020年度に選出されたフランス人アーティスト、ラファエル・バロンティーニによる作品集。衣服を着用可能な作品と捉えた上で、架空のパレードで祝福される英雄達を制作し、絵画史上における黒人の登場人物の描写に挑戦した本作ですが、フォーマットは同様ながらもその制作過程はこれまでに制作された他の参加作家たちの作品集とは大きく異なります。今回のプログラムは新型コロナウイルスのパンデミックの最中に実施されたため、作家と出版社はこれまで採用していた成果物と展示風景を収録したアーカイブとしての作品集作りのアプローチを変更することを強いられたのです。コロナ禍によって生じたトラブルや不都合をありのまま抱えながらも、作家の創造性を最大限に活かして事態を乗り越えており、その結果かつてなく作家性を強く感じさせる作品集に仕上がっています。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/soukhos-by-rapha-l-barontini



The City And All It Holds by Roni Ahn

ロンドンを拠点に活動する写真家、ロニ・アーンによる自費出版作品。新型コロナウイルスのパンデミックを受け、アーンは身近な存在や環境の重要性について考えるようになりました。本書はそのような考えのもと、アーンが故郷の香港を訪れ撮影した写真から構成されています。一見、若者やユースカルチャーをテーマにした作品に見えるのですが、あくまでも友人や恋人、あるいは彼らと撮影地との「関係性」が主題となっており、ページを捲るたびにそれぞれの登場人物たちのストーリーを想像させられます。若者を中心に取り上げているのは、その年代が人間関係が特に変化しやすい時期であり、移ろいやすく繊細なものだからこそ身近な繋がりが大切なのだという作家の考えが反映されているのではないかと思いました。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/signed-the-city-and-all-it-holds-by-roni-ahn


Archivist Addendum First Edition

ロンドンに拠点を置く出版プロジェクト、Archivist Addendumの初となる作品集。ファッション雑誌の世界において重要視されるフォーマットやシーズンといった常識に左右されずに、定型化されたファッションエディトリアルと難解なアカデミックな領域の間で新たな表現可能性を模索することを目的に制作された本作では、様々な資料が納められたユニークなボックス型のフォーマットを採っています。ファッションエディトリアルとアカデミズムだけでなく、ファッション雑誌とアーティストブックの中間という、新たな領域の可能性を感じさせる意欲的な作品だと思いました。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/archivist-addendum-first-edition


Installation View: Photography Exhibitions In Australia (1848-2020) 

写真の表現形態としての展示(インスタレーション)に着目することで、どのような写真史観が浮かび上がるのか。そのようなアイディアをもとに制作された、これまでありそうでなかった一冊。絵画時代から現代に至るまで、有名無名含めたさまざまな展覧会やインディペンデントギャラリーの活動が紹介されており、オーストラリアの大変豊かな写真の歴史に驚かされます。なかなか渋い内容なので売れ行きが良い本ではありませんが、図版も豊富に収録しているので写真に興味を持っている方や写真表現に携わる方は必携の一冊だと思います。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/installation-view-photography-exhibitions-in-australia-1848-2020


Japan Works by Aglaia Konrad

今年の9月から11月にかけてIACKで店頭、オンラインと立て続けにイベントを開催したオーストリア人アーティスト、アグライア・コンラッドによる作品集。本作に関しては以前掲載した記事にたっぷりと書きましたので詳細は割愛しますが、作品内容はもちろんのこと、作家の文脈や制作プロセスを見事に本に反映させた出版社の手腕にも注目です。また、読者が暮らす文化圏や地域によっても大きく見方が変わる面白さもあると思います。まだご覧になられていない方はこの年末に是非どうぞ。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/japan-works-by-aglaia-konrad


Choreography with Potatoes and Flour by Line Bøhmer Løkken

ノルウェーのアーティスト・ラン・パブリッシャー、「Multipress」を主催する写真家、リーナ・バーマ・ロッケンの最新作。パン職人であるロッケンの父親が生地をこねる様子を撮影した写真を用いて、まるで生地のように写真をさまざまなサイズに引き伸ばしたり折り畳んだり開いたり…。ネガやデータをもとに自在に出力される写真というメディアの特性と生地の性質が軽やかに重ね合わされ、表現されています。さまざまなサイズの紙を組み合わせる手法自体は珍しくありませんが、本書は作品内容と形態が完璧にマッチしており、デザインが先行しすぎずに表現手法として自然に用いられているところが良いと思いました。実物を手に取れる店頭で特に好評をいただいた一冊でした。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/signed-choreography-with-potatoes-and-flour-by-line-bohmer-lokken


Somersault by Raymond Meeks

まるで仕掛け絵本のように視覚的にも触覚的にも楽しませる作品集が多く制作される現代において、作品集における伝統的かつ最小単位とも言える表現手法である「シークエンス」をストイックに追求する写真家、レイモンド・ミークスの最新作。今回も研ぎ澄まされたシークエンスはもちろん見事なのですが、落ち着いたマットな用紙とフレンチ・フォールド(袋とじのような製本)を採用することで、被写体へと向けられた作家の穏やかな視線が上手く表現されています。白黒中心の構成に突如として挟み込まれる草花のカラー写真もアクセントとして大変効果的に機能しており、シンプルな構成の作品集にもまだまだ可能性があることを思い知らされます。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/somersault-by-raymond-meeks


Nice by Mark Peckmezian

ベルリンを拠点に活動するカナダ人写真家、マーク・ペクメジアンのファースト・ブックは、過去5年間に旅先で撮影された500枚以上ものポートレート作品のなからセレクトされた117枚の作品を収録。近年多く見られるようなポートレート写真とは異なり、パクメジアンは人の表情がもつコミュニケーションの媒介としての機能に着目しています。その点においてはとてもオーソドックスなポートレート写真ですが、被写体のエスニシティの豊かさや漠然とした枠組みは自ずと同時代的な要素を感じさせます。また、画面一杯に顔を配置する撮影スタイルながらも僅かに映し出される背景にまで細かく気を配っており、その技巧的側面も見応えがあります。同様のスタイルで撮影を続けるのか、作家としての表現的飛躍を遂げるのか、今後の活動にも注目の作家のひとりです。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/nice-by-mark-peckmezian


Polder Viii, Tuindorp Oostzaan, Amsterdam 1920 - 2020 by Raimond Wouda 

人口問題と労働階級の市民たちの生活環境を改善するべく、1921年にアムステルダム北部に建設されたガーデン・ヴィレッジ、「トゥインドルプ・オーストザーン」。本書は祖父母の代からそこで生活をしてきた作者が、その歴史と自らのルーツを探るために撮影した写真を中心に構成した作品集です。資料を織り交ぜながら展開するスタイルのドキュメンタリー/ジャーナリズムは今では既にフォーマットのひとつとして完成されていますが、本書はその型とは少々異なる表現手法を模索しているような気がします(いまいち言語化が難しいのですが…)。生活環境や労働環境を意識する機会が間違いなく増えている今だからこそ、読みたい一冊。なお、今年は「トゥインドルプ・オーストザーン」の建設100周年です。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/polder-viii-tuindorp-oostzaan-amsterdam-1920-2020-by-raimond-wouda


PLAY by Philippe Jarrigeon

フランス人写真家、フィリップ・ジャリジョンのキャリア15年目にして初の作品集となる本書は、これまでジャリジョンが撮影してきたさまざまなジャンルのパーソナル/エディトリアルワークや、その未公開カットからセレクトした写真を再構成して収録。イメージはどのように作られ、そして社会や人々はどのようにイメージに作用されるのかということを中心的なテーマとなっていますが、細かいことはさておきユーモアあふれる写真は見ていてとても楽しいです。そして単に代表作を集めた集大成的な作品集かと思えば大違い。本というフォーマットで作品を見せることをしっかりと意識して編集されています。細かく演出された写真と静物写真、風景写真が並べられることで、現実と作られたイメージの境界線が揺さぶられるような構成など、つい見逃しそうになるけれど目を凝らすと不思議な部分が見つかるという特徴は、まるで私たちの生きる世界そのものを表現しているかのようです。

https://www.iack.online/collections/books-2021/products/play-by-philippe-jarrigeon

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以上、特に気になった10冊をご紹介いたしました。

以下ページではその他タイトルも含めた2021年刊行作品集をご覧いただけますので、どうぞあわせてご覧になってみてください。

https://www.iack.online/collections/books-2021

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