OKINAWA!! by Victoire Thierrée
フランス人アーティスト、ヴィクトワール・ティエレによる写真集。
ティエレが沖縄という土地に出会ったのは、2012年に初めて日本を訪れた際、写真家・東松照明(1930–2012)の作品を通じてであった。東松は、沖縄におけるアメリカ軍の駐留を最初に記録した写真家であり、その成果は1969年に刊行された『Okinawa 沖縄 Okinawa』に結実している。
2019年、ティエレは沖縄を再訪し、現在も32の米軍基地が存在するこの地で撮影を行った。彼女は各基地の周辺に焦点を当て、6×9(縦位置)フォーマットによる白黒写真を制作。撮影地では、自然が人為的な占有に対して静かに抵抗するように、ゆっくりと優勢を取り戻しているように見えたという。
このシリーズをきっかけに、彼女は2023年にワシントンのスミソニアン協会アーカイブを訪れ、植物学者エグバート・H・ウォーカー(1899–1991)の調査に取り組んだ。ウォーカーは戦後、「兵士による採集プログラム(Servicemen’s Collecting Program)」の一環として、米軍兵士に自然標本(植物、鉱物、サンゴなど)の採集を促し、その記録を残している。1951年には、沖縄戦の激戦地を含む地域から、8,000点以上の植物標本が収集された。
ティエレはそのアーカイブから40点のハーバリウム標本を選び、白黒で再撮影。本書『OKINAWA!!』は、彼女によるふたつの写真シリーズ──基地周辺の風景と植物標本──を一冊にまとめたものであり、過去と現在、記録と自然、占有と回復のあいだにある静かな対話を提示している。
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Title: OKINAWA!!
Artist: Victoire Thierrée
Publisher: RVB Books, 2025
Format: Hardcover
Size: 230 × 335 mm
Pages: 120
Language: English and French
Edition: First edition
ISBN: 978-2-492175-57-2
Price: ¥8,030
ブックレビュー:OKINAWA 1969–2025─ふたりの写真家が見つめた沖縄