Fungi by Nicolai Howalt
デンマーク人ビジュアル・アーティスト、ニコライ・ハウルトによるアーティストブック。
『Fungi』は、肉眼ではほとんど捉えられないが、太陽光や酸素と同じほど地球上の生命に不可欠な領域を見つめる作品である。芸術的実験と科学的探究の交差点に立ちながら、ニコライ・ハウルトは複数種の菌類を自身の創作および写真制作のプロセスへと取り込む。これら謎めいた生物そのものが、作品の視覚的・物質的な結果に直接影響を及ぼす構造をつくり出している。
遮光された箱の内部で、ハウルトは選定した菌類の胞子を、未露光のアナログ写真印画紙の上に直接培養する。菌類は印画紙表面のゼラチン層を栄養源として成長し、感光乳剤の一部を侵食するが、その痕跡は暗室で現像されるまで姿を現さない。こうして生まれるのは、菌類自身によって生成されたフォトグラムのシリーズであり、紙の緩やかな劣化を通して、繊細な菌糸ネットワークが有機的な構成として立ち上がる。別のプロセスでは、胞子をシャーレ内で慎重に培養し、高解像度でスキャンすることで、通常は目にすることのない菌類の形態や色彩に満ちた、鮮やかな微視的世界を可視化する。さらにハウルトは、菌類を紙のように薄い層へと成長させ、数か月かけて自然乾燥させる試みも行っている。乾燥後に得られる脆く半透明なシートは、暗室において一点物の「菌類ネガ」として用いられる。
それぞれのイメージは、人間の意図と人間以外の存在による作用との静かな対話として立ち現れる。感光紙の上で短い生を生きた生命の痕跡、摂食と侵食によって刻まれた痕、成長と腐朽、存在と消失のはざまに生まれる、かろうじて留められた刻印である。菌類が生態系の均衡、医療、そして持続可能なイノベーションの未来において重要な鍵として認識されつつある現在、本書はハウルトの実験的作品群を、詩的かつ触覚的な一冊へと結実させている。デザインは数々の受賞歴をもつ Rasmus Koch Studio、作家モルテン・ソンダーゴーと菌類学者ヘニング・クヌーセンによるテキストを併録する。
Fungi は、科学的カタログでも植物学的図鑑でもない。菌類と、それらが生命や物質の形成に果たす役割についての、詩的かつ視覚的な思索である。標本の単なる記録に留まることなく、ハウルトは菌類を制作過程そのものへと組み込み、直接的で触知的、かつ共創的なかたちで芸術的探究を行っている。本作は科学と芸術の境界を横断し、実存的エコロジー、時間、写真の現象学、さらには菌類学の歴史に関わる問いへと接続する。変容と共存、イメージ生成のプロセス、そして生きた有機体がもたらす予測不能な美学についての省察である。
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Title: Fungi
Artist: Nicolai Howalt
Publisher: Fabrikbooks, 2025
Book Design: Rasmus Koch Studio
Text: Henning Knudsen, Associate Professor Emeritus of Mycology, Natural History Museum of Denmark; Morten Søndergaard
Print: Narayana Press
Format: Linen hardcover, rounded corners, coloured edges, leporello
Size: 165 × 225 mm
Pages: 160
Plates: 84 + leporello with 5 plates
Language: English
Edition: First edition
ISBN: 978-87-974253-0-5