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Recherche

OKINAWA 1969–2025
ふたりの写真家が見つめた沖縄


個人的な話になりますが、昨年、人生で初めて沖縄を訪れました。


それ以来、沖縄に強い関心を抱いていたこともあり、かねてより取り扱いのあるフランスのRVB Booksから、沖縄を題材にした写真集が刊行されると知り、入荷を心待ちにしていました。


フランス人アーティスト、ヴィクトワール・ティエレが沖縄と出会ったのは、戦後を代表する日本人写真家・東松照明による写真集『OKINAWA 沖縄 OKINAWA : 写真集 <沖縄に基地があるのではなく基地の中に沖縄がある>』(写研、1969年)を通じてでした。


その写真集をきっかけにティエレは沖縄を訪れ、現代も広がる米軍基地と、それを包み込むような自然の力強さに触れます。小さな島国における領土のせめぎ合いと、それすらも呑み込む自然の存在。ティエレは、東松のイメージを継承しながら、より現代的なアプローチでその姿を捉える方法を模索し始めました。


OKINAWA 沖縄 OKINAWA : 写真集 <沖縄に基地があるのではなく基地の中に沖縄がある> 写研、1969年刊)


彼女はまず、32ヶ所の基地周辺を飛び交う飛行機と自然の風景を撮影しました。粒子が粗く、迫力ある縦構図のモノクローム写真は、東松だけでなく、どこか中平卓馬やウォルフガング・ティルマンスの作品も想起させます。



OKINAWA!! by Victoire Thierrée(RVB Books、2025年刊)


さらにティエレは、典型的なドキュメンタリー写真の枠組みにとどまらず、歴史的供述と視覚的内容により深みをもたらすために、植物学者エグバート・H・ウォーカー(1899–1991)の記録をリサーチしました。


ウォーカーは戦後、兵士による採集プログラムの一環として、米軍兵士に自然標本(植物、鉱物、サンゴなど)の採集を促し、その記録を残しています。1951年には、沖縄戦の激戦地を含む地域から8,000点以上の植物標本が収集されたそうです。ティエレはそのアーカイブから40点のハーバリウム標本を選び、同じくモノクロームのフィルムで再撮影しました。


ラフにテープで台紙に貼られた植物たちは、捕虜のようにも、個人の押し花帳やポップなコラージュのようにも見えます。これらの植物が現在も自生しているかは不明ですが、戦後を生き延び、繁殖を続けているかもしれません。また、巻末に収録された、沖縄戦を生き延びた人物とベゴニアの花、そして本にまつわる物語を読むと、この作品全体がある種の「祈り」のようにも感じられてきます。


OKINAWA!! by Victoire Thierrée(RVB Books、2025年刊)


沖縄の政治的側面を見つめ、その現状を捉えるという点では、ティエレの作品は東松照明の姿勢と重なる部分があります。ただし、東松が人々や文化を含む「現場」主義的なアプローチをとったのに対し、ティエレは実地調査を行いながらも、「基地」と「自然」というスケールの大きな対象に焦点を当て、外部の視点を受け入れつつその姿を捉えています。


同じ「調査」であっても、前者は報道的な調査、後者はリサーチとしての調査というべきでしょう。それぞれの立場でしか見えない視点があること、そしてどちらが正しいというものでもないことは、両者を並べて見ることで一層明確になります。


異なる時代、2冊の「Okinawa」


写真史における歴史的重要作と、過去と現在、記録と自然、占有と回復のあいだにある静かな対話に挑戦した現代の意欲作です。

2冊が揃ったこの機会にどうぞご高覧ください。


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OKINAWA 沖縄 OKINAWA : 写真集 <沖縄に基地があるのではなく基地の中に沖縄がある>
https://www.iack.online/products/okinawa-okinawa-okinawa