IACKは先日設立4年目を迎えました。
3年目の去年はパンデミックという、かつて経験したことのない不安定な社会状況の中で迎えたこともあり、現在できることを重点的に考えていた気がします。「アフター・コロナ」や「ウィズ・コロナ」という言葉と共に新しい世界を想像しようと至るところで言われていましたが、1年がたった今もそのような世界はまだやってきそうにはありません。
だからこそ、4年目は揺らぐことのない活動の芯となる部分を再確認し、未来へ向けたより長期的なヴィジョンを掲げ、そして皆様と共により豊かな作品集との携わり方を考えていきたいと思っております。
【作品セレクトの基準】
そこで初めに、「どのような作品集を、どのように紹介していくか」という、IACKの根幹に関わる部分を再確認することにいたしました。
まずはお客様にも頻繁に尋ねられる前者から。IACKでは以下の点を特に重視して作品集を選んでいます。
- ジャンルを問わず、まず第一に作品自体(内容)の強度が感じられるか
- 作品集は展示同様に独立した表現形態であり、そのことを意識した作品作りが成されているか
- 作品内容・表現手法・アウトプットのバランス
全ての作品に必ずしも当てはまるわけではありませんが、以上は設立当初から重視しているポイントです。
基本的に、作品集を読むときは本それ自体のデザインや細部よりも、まずは収録された作品自体をしっかりと見るようにしています。無論、デザインが素晴らしい本や見ているだけで様々な感情を刺激する本も多く存在しますし、実際に表紙から内容に興味を抱くことも多々あります。しかし、長く自分の中に残ったり、時代を問わず輝き続ける一冊には必ずと言っていいほど作品自体の力強さがあります。外見が優れている作品集は、その見た目になるまでにしっかりと段取りを踏んでいるが故にその外見になっており、それこそ作品がうまくアウトプットされていると呼ぶべきなのだ思います。
そして、バランスは単純なようで奥が深い要素です。「作品内容」は文字通り作品自体のことであり、「表現手法」は作品テーマやコンセプトをいかに表現しているか、「アウトプット」とは例えば印刷、用紙、レイアウト、デザインなどの本としての落とし込み方を表します。単にバランスが均等であればよいわけではなく、いかに数値を振り分け全体のバランスを保つのか、あるいは新たなバランスに挑戦しているかというところが見所です。
たとえ作品内容が優れていても、それを表現するための手法や最終的にブックデザインが蔑ろにされており、「8:1:1」のバランスだと良い作品集とは呼べないでしょう。あるいはデザインが完璧だとしても「1:1:8」だとどうでしょうか。一方でバランスの取れた「4:3:3」の作品だけが正解かというと、そうでもない気がします。なお、この比率は優劣を表す数値ではなく、最終的な形態からどれだけ各要素を感じさせるかの指標と捉えてください。
作品の良さや性質は本来数値化できるものではありません。しかし、このような基準は作品の文脈/歴史と同じくらい客観的で重要な判断材料にもなり得ます。例えば、ぼくがいくら「良い作品集」について論じていても、それが単なる好みに基づいた「良さ」であればあまり説得力がありませんが、その「良さ」を客観的な要素に置き換えて話すだけでも幾分か伝わりやすくなるわけですから。
(つづく)