(Tenth Anniversary Edition) Illuminance by Rinko Kawauchi
日本人写真家、川内倫子による作品集。
『うたたね』、『花火』、『花子』の3冊同時出版から10年、『うたたね』の世界をさらなる高みへと昇華させた作品として、本作は制作された。タイトルに掲げられた「Illuminance(照度)」は、人間が感じる、平面を照らす明るさの心理的な物量を意味する。川内はそれを写真の根源的なテーマと捉え、「光」を題材に約15年をかけて撮りためた写真を一冊の本にまとめた。一見したところ「何気ない日常」の中できらめくフォトジェニックな光景をまとめた写真集にも見えるが、本書で注目すべきは、そのような日常の中に潜む無数の終わりの場面をもすくい上げる作者の視線であり、あらゆる事象を分け隔てなく四角形の画面へと収めていくその態度である。終わりは突如として訪れる、しかしそれでも生者たちの日常は続いていく。バラバラのモチーフを繊細に編み上げることで、川内はこの世の美しさと物哀しさを凝縮したような景色を一冊の写真集の中に描き出している。
10周年記念版となる本書は、初版の構成はそのままに、オランダの「fw:books」を主催するアート・ディレクター、ハンス・グレメン(Hans Gremmen)によって装丁を一新。デイビッド・チャンドラー(David Chandler)によるテキストの再収録に加え、新たに哲学者の篠原雅武と、Apertureのクリエイティブ・ディレクターであるレスリー・A・マーティン(Lesley A. Martin)による論考が加えられている。
「とても精巧に作られたこのモノグラフによって、川内倫子の名前を誰もが知るようになるはずだ」- アレック・ソス(写真家)
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Title: Illuminance
Artist: Rinko Kawauchi
torch press/Aperture, 2021
Hardcover with obi-band, French fold / Swiss binding
287 x 219 mm
384 pages
Text in Japanese
The tenth anniversary edition
¥6,500 + tax
作品集を読む『Illuminance』(前編)
https://www.iack.online/pages/illuminance-1