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まもなく終了:IACK Archive Fair Online

オンラインストアで開催中の「IACK Archive Fair Online」は、今週日曜日までの会期となります。

今回このような企画を行うことを決めたことには、4周年という節目を迎えるにあたり活動方針を再検討するため、そして何よりいつもご愛顧いただいている皆さまへの感謝を何らかの形で還元したいという気持ちがあります。

IACKはこれまで作品集を、ギャラリー等で展示される実際の(というのもおかしな言い方ですが)作品と異なり、場所や時代を超えて多くの人に開かれ、そして物理的にも経済的にもアーカイブが比較的容易なメディアとして注目してきました。

展示空間では作品が一箇所に固定され、その場に足を運べる人だけが特権的に鑑賞可能であること対し、作品集は国境すら超え、世界中の書店というハブを通して様々な人が手に取り鑑賞することができます。会期などの時間の制約もないため、時代や世代を超えて予期しない形で再発見されることもあります。また、実際にひとりの作家の作品をまとめて鑑賞したり揃えることは容易ではありませんが、作品集を集め、鑑賞することはある意味より現実的で身近な作品の楽しみ方であると言えるでしょう。作家が作品として作品集を制作している場合は、順を追って読むことで制作の軌跡をダイレクトに辿ることもできます。

主にこれらの理由から、IACKでは作品集を作品と捉えたオルタナティブな作品鑑賞のあり方を改めて提唱してきたのですが、COVID-19の世界的流行により変化する日々の生活の中で、そのように作品集が作品として一定の強度を持ち、機能するための前提について改めて問い直す必要があるのではないかという気持ちが少しずつ芽生えてきました。

例えば、作品集の移動可能な性質は、間違いなく人の移動に対して制限が掛けられている今の時代にこそ有用です。しかし、作品集はそれ単独でひとりでに移動するわけではありません。当然のことながらそれを運ぶ人間がいるから移動することができているわけです。現在の状況はそのような当たり前すぎる前提に対してぼく自身が盲目的であったという現実を突きつけています。

また、展覧会が場所と時間の制約をかけられていることに対して、作品集の高い自由度と民主制にばかりに優位性を感じていましたが、上述の作品集の事例と同様、今はむしろ作品が移動しない代わりに人間を移動させてきたことの意味や重要性も再検討するべきではないかと思います。それこそが、2010年前後からアートブックと写真集が多くの国でかつてないムーブメントとなり、大きく盛り上がる後押しした要因の一つなのだと、今だからこそ身をもって理解することができます。

そしてこれまでIACKの活動の核であり続けた作品集というメディアのこれからのあり方を再考する上で、設立当初からコンセプトにも掲げている「アーカイブ」という要素についても再検討せねばなりません。

IACKは「開かれた書斎」というコンセプトを掲げ設立されました。書斎はアーカイブと言い換えてもいいと思います。当初は自身の探求の場であり、なおかつその資料を共有する研究室といった具合に、より実務的に捉えていた部分もありましたが、時間が経つにつれて徐々に書斎の要素が強くなっていきました。

では改めて「開かれた書斎≒アーカイブ」とは何か。今振り返るとそのようなコンセプトを掲げることを決めたのは、ブックフェアや様々なイベントでの原体験をもとにして、独善的なアーカイブ(コレクション)を行うのではなく、作品とそれに付随する何かが個人のアーカイブから別のアーカイブへ移動していく緩やかなアーカイブの形を無意識のうちに構想していたからなのかもしれません。

このような経緯があり、4年目を迎えた今こそ初心に立ち返ってそのようなアーカイブのあり方を実践しようと思い立った次第です。そしてその次のステップとして、今の時代における作品集と展示両者の可能性などの再考を始められると思っています。

弊店の取り扱いは個人出版やアーティスト・ラン出版が中心のため、そもそもの制作するも多くはなく、また重版されることも殆どありません。そのため日本はおろか海外でも2次市場に出てくることは少なく、手に取る機会もなくなってしまいます。

当フェアを通して、今や貴重となったそれらの作品集をお楽しみいただきながら、現代におけるアーカイブ化や作品のあり方、そして自身のアーカイブについても考えるきっかけとなれば幸いです。


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IACKのアーカイブを書籍化した作品集『Art Books: 79 +1』はこちらからお買い求めいただけます。目録とは一味違った作りで、新しい作品集と出会いたい方は勿論、アートブック好きな方にもお楽しみいただける内容となっております是非あわせてご覧下さいませ。

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