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【検証】10万円のプリント付き作品集は高いのか

久しぶりの更新となります。

現在店頭ではプリント付き特装本フェアを開催中です。

6千円から10万円ほどの価格帯の特装本を展示販売しておりますが、普段作品集を中心に販売していることもあり、そもそもプリントの相場がわからないというお声も少なからずいただいております。

そこで今回の記事では、写真作品の価値はどのような基準で決まるのか、そして10万円の特装版は高いのかを考えてみようと思います。

結論を先に述べますと、10万円のプリント付き作品集は安くはないけれど高くもありません。

もう少し具体的に言い換えると、「一般的な感覚として10万円は安い買い物ではないが、作品の価値を複合的に考慮すると高くない場合もある」となります。

前者についてはこれ以上説明するまでもないと思いますので、今回は後者について、作品の価値や値段がどのように決まるかを駆け足で解説します。

【写真の価値】

写真は絵画や彫刻とは異なり、ネガやデータからいくらでも複製可能な性質を持っています。そこで、他の芸術ジャンルと同等のオリジナル性を作品にもたらすために採用されるのが「エディション制」です。

エディションとは、作品を事前に約束した数だけ制作しますよ、という取り決めです。そうすることで作品の信用性と希少価値を担保しています。

写真作品の場合は大体3部から5部のエディションが一般的で、多くて10部ほどです。生産数が希少性を担保し価値を決定づけるので、数が少なければ少ないほど値段は上がり、多ければ多いほど値段は下がります。

加えて重要になるのが作家の評価や知名度であり、それを踏まえて最終的な価値が決まります。他の物事と同じく、需要と供給のバランスで作品の価格は変動しているのです。(他にもプリントの年代や技法やサイズなど、さまざまな基準がありますが端折っています)

Framed print from "The Well Special Edition" by Nigel Shafran

今回のフェアで特集するのは、通常版の作品集に加えて部数限定でされたプリント付きの特別版作品集です。

その価値を見極めるためには、先ほどの指標とあわせて以下の4点を判断基準にしてみるといいと思います。

①発行部数/エディションはどのくらいの数か
②プリントのクオリティは高く、作家自体がプリントを監修しているか(サイズや制作技法を含む)
③サインやナンバリングが記入されているか
④通常盤や特装版はまだ市場で入手可能か

以上を踏まえて、今回展示しているマーク・シュタインメッツのプリント付き特装本の価値を検証してみましょう。

【マーク・シュタインメッツの特装本の価値】

"Past K-Ville" Special Edition by Mark Steinmetz

アメリカ人写真家のマーク・シュタインメッツは1961年生まれ、イェール大学で写真を学びました。ストリート・フォトグラフィーの巨匠、ギャリー・ウィノグラウンドの運転手として一年間行動を共にしたエピソードもある、超正統派アメリカ写真の写真家です。

これまでに美術館での個展やグループ展を多数開催しており、彼の作品はさまざまな施設にコレクションとして収蔵されています。また大手出版社から独立形出版社まで、現在進行形で多数写真集も出版しています。作品の価格については公開されていないので不明ですが、おそらくかなりいい値段がするものと推測されます。

では、今回出展している特装版をみていきます。

①発行部数/エディションはどのくらいの数か
発行部数は50部限定。シュタインメッツはこれまでに500部限定のプリント付き作品集も出版していたりもするので、50部は特装版としてかなり少ない部類になります。そもそも世界中で50人のみが所有できると考えるとかなり少なく貴重ではないでしょうか。

②プリントのクオリティは高く、作家自体がプリントを監修しているか
出版社のウェブサイトをみると、手焼きではないものの、信頼のおけるプリンターが制作した高品質なプリントであることがわかります。サイズは230 x 162 mmで、悪くないサイズです。

③サインやナンバリングが記入されているか
それぞれにサインとシリアルナンバーが入っています。

④通常盤や特装版はまだ市場で入手可能か
本作は通常盤も特装版もすでに絶版となっており、通常盤は版元で約8万円、また20万円以上の値付けをしている場所もあります。特装版はどこにも売っていません。この時点で額装付きのプリントと本がセットで10万円は破格の値段だとお分かりいただけると思います。プリントは実質1、2万円です。おそらくもっと値段を上げてもそのうち売れるでしょう。

情報をまとめてみます。

・この作家はアメリカ写真史に則った大御所作家である
・普段のプリントはおそらく倍以上の価格で取引されている
・発行部数は少ない方で、価値も高い
・高品質なプリントで、サイズも良い
・作家によるサインとナンバリングが入っている
・通常盤、特装版ともに既に絶版かつプレミアがついている

このように、本作の価格として10万円は決して高くないことがわかりました。

他の作品集についても同様に検証すると同じような結果になるかと思います。

Framed print from"Past K-Ville" Special Edition by Mark Steinmetz

店主も普段10万円の作品を軽々と買うかと言われたら、そのようなことはありません。しかし、プリント付き特装本は、憧れの作家の作品を作品集とセットで手頃に購入できるチャンスであり、また、初めての作品購入としてもまたとない機会であることは確かです。

何より、作品集も良いですが、飾ることで空間そのものにインパクトを与えるプリントもまた良いものです。

展示は今月30日まで。メールでも通販対応を承りますのでご遠慮なくお問い合わせください。

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特装本プリントフェア
会期|2024年3月16日(土)、17日(日)、20日(水祝)、23日(土)、24日(日)、25日(月)、30日(土)*31日(日)は休業
営業時間|11:00-14:00、15:00-18:00
会場:IACK 〒920-0864 石川県金沢市高岡町18-3

入場無料
問い合わせ:info (at) iack.studio
詳細:https://www.iack.online/blogs/news/special-edition-prints-fair
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令和6年能登半島地震による配送遅延状況

この度の地震で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。被災地への1日も早い支援の到着と復興を心よりお祈り申し上げます。

IACKオンラインストアでは通常通りご注文を承っておりますが、令和6年能登半島地震の影響により、ヤマト運輸での荷物の配送に遅延が生じる可能性がございます。

皆様にはご不便をおかけしますが、何卒ご留意くださいますようよろしくお願い申し上げます。

最新情報:
【ヤマト運輸】お荷物の集配および営業所の営業状況について
(2024年1月5日 13:00時点)
https://www.yamato-hd.co.jp/important/info_221214_1.html

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作品集の基本的な触り方について



IACK店頭では全ての本をお手に取ってご覧いただけますが、中には稀少な作品集や古くて傷みやすいものも多くございます。

だからといってそのような本を手に取れないようにしてしまうのは、作品集が作品集であることを否定することになる気がしますし、そのことをご理解いただいた上で皆様にご協力をいただければ、より多くの作品集を手に取れる機会が増えるのではないかと思います。

そこで店頭での写真集の扱い方について、参考までに簡易的な動画を作成いたしましたので、是非ご来場前にご覧くださいませ。

開催中
IACK Collection
Photoooks by Daido Moriyama and Takuma Nakahira
会期:8月5日(土)6日(日)7日(月)8日(火)11日(金)12日(土)13日(日)
営業時間:平日11:00-16:00/土日祝12:00-19:00
会場:IACK

【ご来場における注意事項】
体調の優れない方は入場をご遠慮ください。作品に与えるダメージを抑えるため、入場時に手指の消毒をお願いいたします。
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なぜ「オリジナル版」を手に取るべきか



近年出版される作品集の場合、初版本と再販本に違いはほとんどありませんが、この年代の作品集は初版本が「オリジナル」として扱われる大きな理由があります。

①作品集が作品
当時は展覧会での作品発表は行われていましたが、プリントを販売する習慣は殆どありませんでした。そのため作品集が作品の最終目標であったとされています。

②印刷の違い
当時のグラビア印刷機で生み出される写真集はインクに厚みがあり、今読んでも手にインクが付着して黒ずむほど。クオリティというよりも、質感に大きな違いが生まれています印象です。

③文字通りオリジナル
以上のふたつの理由に加えて、当時のネガやプリントが現存していないことが多く、初版本は再販本を制作する際のマスターとして使用されます。

オリジナルにはオリジナルの良さがあり、再販本には再販本の良さがあります。会場では復刻版と合わせて展示をしておりますので、ぜひ読み比べてみてください。
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サンプルセールについて

サンプルセールもいよいよ終了間近となりましたが、皆様お楽しみいただけているでしょうか。

今更ではありますが、IACKがサンプルセールを行う経緯、そしてサンプル品とは何かについて、実情を交えながら簡単にご解説いたします。


【サンプルセールとは】

普段から作品集を定価で買ってくださる方々を尊重したい気持ちから、IACKは基本的にセールを行いません。

しかし一方で、セールをきっかけにより多くの人が作品集を購入して読む体験をしたり、顧客様たちによりお得に多くの作品集を楽しんでもらいたい気持ちもあります。

そこで、閲覧用に使用した本やダメージ本に的を絞り、作品を見ることが日常の一部となるように思いを込めて、IACKは文化の日のサンプルセールをスタートしました。


【そもそもサンプル本とは】

サンプル本とは言いますが、実のところ、基本的に作品集にサンプル本はありません。

IACKで中心に取り扱う個人規模の出版では、発行部数は少ないもので数十部、多くても一度の発行部数は数千部です。場合によっては閲覧用の在庫が用意されることもありますが、ほとんどの場合は仕入れた商品のうちの一冊を閲覧用として使用しています。その一冊は当然通常通りお金を払って仕入れた商品であり、また上述したような限られた制作部数のうちの一冊です。

この2点が、作品集を扱う書店が本を乱雑に扱われるのを嫌う理由のひとつです。

このような経緯で、仕入れた本のうちの一冊は新品として販売できません。(すでに出版社で売り切れになっている場合や、状態によってはそのまま販売することもあります。また書店によってその基準はもちろん異なります)

IACKのサンプルセールではそれらの本を「サンプル」としてディスカウントをかけ、またおまけとして一部の古書や希少本も少し割引をして販売しており、販売者にとっては完全な状態ではない本が渡る先を生み出し、消費者にとってはお得な価格で本を購入できる機会としています。


【本の状態について】

基本的に閲覧用のものにはプラスチック製のカバーをかけていますが、物理的にかけられないものや質感などが伝わらなくなると魅力が損なわれるものにはかけておらず、加えて手が追いつかずかけきれない場合もあり、それらの本は経年とともにスレやキズ、ヤケが生じます。

コレクションの目的で購入する場合は新品を購入されることをお勧めいたしますが、作品を鑑賞する目的であればサンプル本で全く問題はないと思います。

しかし、実際は新品同様のものもあれば、汚れがあるものもございますので、詳細を知りたい場合はご遠慮なくお問い合わせください。


【作品集を買うこと】

読みたい本、欲しい本を全て購入できる人はほとんどいないと思います。そのため、作品集を楽しむ、あるいは勉強する上で、店頭での立ち読みはとても大切な行為です。


店主も他店舗でかなり立ち読みをしますし、IACKでも立ち読みは歓迎しています。しかし、実際に作品集を購入し、自宅でじっくりと読むのと立ち読みをするのでは、作品の見え方や理解度が全く異なります。

私的な場で周りの目や時間を気にせず読むことができること、繰り返し何度も、時代を超えて好きな時に読むことができること、これが実際に買ってみることの重要な理由のひとつだと思います。

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現在ではイベント時期が重なることから文化の日ではなく、ほかの時期にサンプルセールを開催していますが、文化として作品を楽しむことが根付いて欲しいという志は変わりません。

サンプルセールは水曜日の24時までの開催です。この機会に作品集をより身近なところで楽しむきっかけとなれば幸いです。

IACK SUMMER SAMPLE SALE 2023
7月22日(土)0:00 〜 7月26日(水)24:00
www.iack.online/collections/summer-sample-sale-2023

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