2019/12/12 14:52

こんにちは。2019年も残すところわずかとなりました。


今年もIACKs choiceと称し、取り扱いタイトルの中でも特に注目した作品集をセレクトいたしました。




LOOPS by Anders Edström

スウェーデン人写真家/映像作家のアンダース・エドストローム(Anders Edström)の作品集。その昔、ドイツのSteidl傘下のSteidlMACKから出版された作品集でも、本というフォーマット上で非直線的なシークエンスを構築する実験を行っていましたが、本作は15年越しにそのような実験精神を強く感じた一冊でした。フィルム写真スナップの延長線上にあるようなデジタルカメラを使ったスナップ写真に加え、繰り返し登場し、写真や印刷物の性質そのものに言及するような顔料インクの写真の組み合わせが、作家の新境地を感じさせます。

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https://www.iack.online/items/20903287




Read Naked by Erik Kassels

ファウンド・フォト作品で知られるオランダ人アーティスト、エリック・ケッセルズ(ERIK KESSELS)の新作。本作では裸で読書を行う人々の写真が収集されています。写真自体も大変ミステリアスですが、半分以上のページが写真も印刷されておらず、余白になっている点もまた謎めいています。実は本書に合わせて、読者たちがこの本を裸で読んでいる姿を自撮りしてアップロードできるページが作られています。設けられた余白は、このプロジェクトを通して将来そのページに私たちの写真が入り込む余地があることを示唆しているのでしょう。作品集単体で完結せず、なおかつ想像力を余白として取り入れたユニークな一冊でした。

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https://www.iack.online/items/23313777




IN VENETO, 1984-89 by Guido Guidi

つい最近MACKから出版されたイタリア人写真家、グイド・グイディ(Guido Guidi)の作品集。近年、クラシックな作品集の復刊が大きな動きとして見受けられますが、復刊とは違い、存命作家の未発表作品が書籍化されています。この本を読んで、写真が撮影された80年代当時にこの本が出版されていたとしたら、それはどのような本だったのだろうかと思いました。過去に撮影された未発表作品の現代における出版が、逆説的に現代のブックデザインの傾向や、写真集のあり方を強く表していると感じたからです。時代性は作品集に反映され、そして作品の享受にも大きく影響することを改めて実感しました。

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https://www.iack.online/items/24781192




WHITE FLAG by Hanna Putz & Sophie Thun

これはかなり画期的な作品集だと思いました。本書は友人であるハンナ・パッツ(Hanna Putz)とソフィー・トゥン(Sophie Thun)が互いを同時に撮影した写真を見開きで対置して構成。一見したとことろ、仲の良い二人の可笑しい写真集のように見えますが、実はその背景には明確なコンセプトがあります。写真史において女性は「ミューズ」として扱われ、見られる対象として撮影者、そして鑑賞者からの一方的な視線に晒されてきました。本書で二人は写真と本の特性を活かした鮮やかな反撃を行っています。White Flag、つまり白旗を掲げた表紙をめくると一転、互いに向けられたレンズの向き先が被写体=鑑賞者=撮影者と重なることで、私たちは常に見つめ、そして見返される世界に閉じ込められてしまうのです。本というフォーマットだからこそ可能な、鑑賞者を巻き込んだゲームのような愉快さをもちながら、そのような無意識の視線や抑圧に言及する鋭い作品集でした。

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https://www.iack.online/items/21609509



The Saxons of Transylvania by Pascual Martínez + Vincent Sáez

写真はいかに何かを物語るか、ということは現在個人的に注目しているテーマです。本作は文学的な作品集作りに長けたロンドンの独立系出版社、Overlapseより出版された、スペイン人写真家デュオ、パスカル・マルティネス(Pascual Martínez)とヴィンセント・サエス(Vincent Sáez)の2冊目の作品集です。民間伝承と歴史的事実をうまく組み合わせ、作品世界に没入させるような本の構成力は相変わらず見事であり、近年花開き、Overlapseが力を入れて取り組むアート・ジャーナリズムブックのお手本のような一冊です。ハーメルンの笛吹き男から最後のサクソン人たちの物語まで、ご自宅でじっくりと読んでいただきたいですね。

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https://www.iack.online/items/24920975




A Swimming Pool by Michele Tagliaferri

本を使った新しい写真表現に、先ほど挙げたWhite Flagと同等かそれ以上に果敢に挑んでいたと思うのが、イタリア人写真家、ミケーレ・タグリアーフェリー(Michele Tagliaferri)の作品集でした。ナイジェル・シャフラン(Nigel Shafran)の作品集、Dark Rooms以降、本というフォーマットでの非・文学的表現を行う、カタログ的かつ一冊の作品として鑑賞可能な作品集はなかなかお目にかかれないのですが、本作は数年越しに登場したその系譜の名作と言えるでしょう。日々のルーティンという要素を、チャプターと反復という構成/手法を取り入れることで表現しており、まるでミニマル音楽のようなカタルシスを読者に与えます。100部しか出版されていないことは写真集の市場の小ささを感じさせますが、入手可能な間に是非手に入れてください。

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https://www.iack.online/items/22797184



The Unforgetting by Peter Watkins

The Saxons of Transylvania』、そして『Swimming Pool』に対し、よりオーソドックスかつ断片的に、写真はいかに何かを語り得るかということに挑んでいるのが、入荷したばかりのこちらの作品集『THE UNFORGETTING 』です。ロンドンを拠点に活動する写真家、ピーター・ワトキンス(Peter Watkins)による本作は、5年ほど前から展示を通して既に一定の評価を得ているシリーズの待望の書籍化であり、第一回SKINNERBOOX BOOK AWARDの受賞作品でもあります。母親の自殺という、非常に重たいテーマを取り扱っていますが、トラウマや喪失というトピックに非常に繊細かつ果敢に挑戦しています。ブックデザインも過度な装飾を行っていないため、写真一枚一枚の力強さが際立っており、断片的であるがゆえに可能な写真独自のナラティブが見事に構築されている一冊です。

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https://www.iack.online/items/25137744


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こうして振り返ると、10年代を締めくくるにあたり良い作品集が出揃ったのではないかと思います。IACKオンラインストアでは写真のカテゴリー欄に、新たに年代別の分類を設けました。2010年代はさらに1年毎にカテゴライズされています。掲載数は少ないですが、年代別にご覧いただくとその年の傾向や移り変わりが浮かび上がり、今後も有用な機能になると思いますのでどうぞご覧になってみてください。



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