2019/06/13 23:49


現在会場では東京を拠点とする古書店・二手舎をゲストに迎えた展覧会、「Research - Progress - Practice #2PROVOKE 思想のための挑発的資料」を開催中です。今回は会期を長めに設定してあるため、開催から2週間が経過したこのタイミングで展示に関する簡単な解説をしようと思います。



PROVOKEとは


『「プロヴォーク」は、1968年に美術評論家の多木浩二と写真家の中平卓馬によって発案され、そこに詩人の岡田隆彦と写真家の高梨豊が加わり創刊された同人誌です。第二号からは写真家の森山大道もメンバーとして参加し、第三号まで発行しましたが、1970年に刊行された総括集を最後にその活動を終え解散しました。 荒れた粒子、ノーファインダーによる不安定な構図、ピントの合っていない不鮮明な写真群は「アレ、ブレ、ボケ」と揶揄され、賛否両論を巻き起こし、ときには写真という枠を超えて大きなインパクトを同時代に与えました。』


そもそも「PROVOKE(プロヴォーク)」とは何か。展示概要で既に説明されていますが、その名前は知らずとも参加作家たちの名前を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。誤解を恐れずに平たく言えば、批評家の多木浩二と写真家の中平卓馬が中心となり自費で出版された写真雑誌ということです。(思想やコンセプトについては、第1巻の巻頭に収録されているステイトメントが分かりやすいのでそちらをご覧ください。)参加作家たちのその後の活躍も相まって、現在では「伝説の」とまで形容される写真雑誌として世界的に広く知られています。


今回の展示は昨年末に二手舎が刊行したPROVOKE復刻版の販売に加え、同時代の写真集やテキスト資料、復刻版の色校正などのマテリアルの展示、そして映画監督の五十嵐耕平が撮影した復刻版制作のショートドキュメンタリーの上映という豊富なコンテンツから構成されています。部屋のサイズに見合わない膨大な情報が溢れかえっているため、繰り返しご来場されるお客様も多くいらっしゃいます。以下個人的にオススメの鑑賞方法ですので、特に一度しかこれないという方は是非お試しください。


スムーズに情報を消化するために

 

1. 下調べ

野暮だとは重々承知していますが、是非ご来場前に一度PROVOKEについてウェブ検索をしてみてください。じっくりと調べる必要はありませんし、会場の説明でも十分ご理解いただけるかと思いますが、実際にどのような写真が掲載されていて、どのような語られ方をしているのか、そしてどのような人物が参加しているのかを頭に入れておくだけでも会場や展示物の見え方が変わると思います。



2. 年代毎に写真集を手にとってみる

壁面に展示されたPROVOKEをご覧になった後は、参加作家たちが出版した写真集をご覧ください。年代毎に作品集をご覧いただくのが特におすすめです。作家が初めて出版した作品集から順にご覧いただくことで、彼らのキャリアにおいてPROVOKEがどのような影響を与えたのかが明確に分かる筈です。特に森山大道と中平卓馬はその変化が顕著に表れており、観る人によってはこれまで抱いていた作家像が変わるかもしれません。そこからPROVOKEをもう一度ご覧になってみてください。



3. 影響を与えた写真集や同時代の作家の写真集をみる

その後は東松照明やウィリアム・クラインなど、PROVOKEの同人たちの思想とスタイルに影響を与えた作家や、同時代の作家たちの写真集をご覧になってみてください。彼らPROVOKE同人たちがいかに独自の発展を遂げていったのかを目にすることができます。そこから会場に設置されたテキストや資料に手を伸ばしてみるといいでしょう。資料は作家やトピック毎に色分けした付箋が貼られているので、作家毎に記事をかいつまんで読むことも可能です。



4. 二手舎の活動に触れる

会場の膨大な資料の中でも一際存在感を放っているのが、二手舎の東方氏が蒐集した当時の雑誌や新聞記事のコピー集です。このファイルにこそ単なる古書店にとどまらない独自の思想を掲げる手舎らしさと、復刻における熱量が感じられるはずです。ブラウン管に映し出されている映像では実際にどのようなプロセスで復刻が進行したのかをご覧いただけます。壁に貼りつけられたマテリアルは映像にも登場します。



5. 番外編:別側面からPROVOKEを観る

会場1階では展示とは別に、今回の企画にあわせて60年代を中心としたIACKのヴィンテージ・アーカイブを展示・販売しています。こちらのミニコーナーでは三里塚闘争や学生闘争関連の写真集や、当時新興してきた新しいスタイルの作家の写真集など、別側面からPROVOKEと当時の社会について触れることができます。ご来場の際は是非併せてご覧下さい。







PROVOKE復刻版とはなんだったのか


会場内の資料や作家のインタビューを読むと、意外なことに刊行当時のPROVOKEは特に社会的な影響やインパクトを与えていなかったことが分かります。参加作家たちのその後の活躍やその希少性故に知名度が上がり、ほとんど手に取ることのできない状況が神格化に拍車をかけたといっても過言ではないでしょう。そのような状況でどうしてPROVOKEについて議論し、評価することができるのだろうか。過剰なまでの神格化に対して、長らくそのように感じていました。今回の復刻版はオリジナルを忠実に再現することでその神話を一度解体し、当時本誌を手にとっていた人たちと同じフラットさでPROVOKEを再検証することができます。それこそが今回の復刻における最も重要な点であるように思います。


当展示はより多くの方に見ていただきたいというだけでなく、情報を消化するために繰り返しご来場ただけるよう、会期を通常より長めに設定しています。繰り返しになりますが、普段触れることすら難しい写真集も全てお手にとってご覧いただくことができますので、是非ご来場ください。


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Research – Progress – Practice #2
PROVOKE 思想のための挑発的資料」 presented by 二手舎
会期:61日(土)– 623日(日)
会場:IACK


IACK
住所:石川県金沢市高岡町18-3
営業時間:12:00 – 19:00
会期中の営業日:水曜日-日曜日
お問い合わせ:info@iack.studio


www.iack.studio