2018/11/28 18:08



この度IACKはスペイン人写真家、ファン・ミゲル・ラミレス=スワスィ(JM Ramirez Suassiの作品集のディストリビューションを開始いたします。


ラミレス=スワスィは1970年、スペインのマヨルカ島生まれ。現在はマドリードを拠点に活動しています。独学で写真を学び、2018年に初の写真集One Eyed Ulyssesを自費出版しました。


本作はマドリードの郊外から中心部を4年間かけて撮影した写真を収録しており、読み進むにつれ郊外から都市部に向かうような構成となっています。しかし特定のテーマや被写体に着目したドキュメンタリーとしては制作されておらず、本作に添えられた数少ないテキストの一つであるドイツ人哲学者、ハンス=ゲオルグ・ガダマー* の言葉からもわかるように、読者が各々自由に物語の道筋を辿り、解釈することが促されています。











本書を紹介した海外のある記事は、本書が有刺鉄線越しに眺める空のイメージと現代的な建造物のイメージで幕を閉じることから、現代社会について暗喩するような印象を受けたと紹介していましたが、私は自然と都市の対比を用いたそのような暗喩に加え、空を自由に飛び回る鳥のイメージに始まりビルに反射する空のイメージで幕を閉じることから、ここで見ていたのは始めからビルに反射する景色のようなものであり、例え息苦しさのある現代社会においても想像力を豊かに保つことで独自の物語を生きることが出来ると謳っている風にも感じました。


どれが正解というわけではなく、このように自由に解釈する余白のある作品なのだと思います。鮮やかでシャープなカラー写真はグレゴリー・ハルパーンを彷彿とさせますが、ハルパーンがより社会に密着したドキュメンタリーを行うのに対し、ラミレス=スワスィはより想像力を重視し、写真を用いたストーリーテリングの手法を独自の方法で昇華している印象です。


表紙をくり貫いたデザインはとてもユニークで、デザインはシンプルかつボリュームも十分。初の自費出版作としては非常にクオリティの高い一冊です。少部数発行のため版元では既に在庫切れとなり、最後の在庫を日本でディストリビューションするために送って貰いました。文字通り世界で175人しか手に取ることが出来ない本作を、少しでも日本の方々にご紹介できる機会を得ることが出来大変嬉しく思います。


この機会にどうぞご覧になってみて下さい。


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*ガダマーはハイデガーの影響のもと「哲学的解釈学」を提唱した哲学者。ガダマーの著作は非常に長く、引用も長くなるため興味を持たれた方はwikiや彼の思想を要約したウェブサイトをご覧になってみてください。