2018/09/21 15:59



ノルウェーの独立系出版社、ÉDITIONS DU LIC(エディション・デュ・リック)をご存知でしょうか。

ÉDITIONS DU LICは2012年にスカンジナビアのコレクティブ、LIFEISCARBON®により設立された独立系出版社です。

当時はポスト・ライアン・マッギンレー世代と呼ばれる、アメリカの写真家ライアン・マッギンレー(Ryan McGinley)に影響を受けた若手写真家たちが世界各地で爆発的に増加しており、ÉDITIONS DU LICは彼らの中でもひときわ身体的な表現を行う写真家たちの作品を中心に扱う出版社として登場します。

何よりも画期的であったのは、スナップショット・スタイルで撮影を行う若手写真家たちの間では、ジンやソフトカバーで自らの写真を出版物に落とし込むことが主流であったのに対し、ÉDITIONS DU LICは彼らの作品を立て続けに豪華なハードカバーで出版したという点でした。特に2017年に急逝した中国人写真家、任航(Ren Hang)のモノグラフ『Republic』は彼の名を世界に知らしめるとともに、大きな注目を集めました。

現在IACKでは彼らの1冊目、そして3冊目の写真集を取り扱っています。



ÉDITIONS DU LICの1冊目の作品として発表されたシンクロドッグス(Syncrodogs)の写真集。シンクロドッグスはウクライナ出身の写真家のタニア・シグロヴァ(Tania Shcheglova)とローマン・ノーヴェン(Roman Noven)によって2008年に結成された写真家デュオであり、Dazed & ConfusedやVice Magazineでのエディトリアルをきっかけに頭角を現し、以降各地で個展やグループ展の参加を行っています。







本書は彼らの最初の写真集であり、ライアン・マッギンレーとヴィヴィアン・サッセンをよりファッショナブルに融合させたようなスタイルは、水面下での時代の移り変わりを象徴しています。出版社の哲学とも言えるスナップショット・スタイル+布張りハードカバーの装丁に加え、大判サイズが視覚的にも新鮮な一冊です。



こちらはポーランド人写真家、ウーカシュ・ウィズボウスキー(Lukasz Wierzbowski)の写真集。シンクロドッグス同様、ポスト・ライアン・マッギンレー世代に続く、ポスト・ヴィヴィアン・サッセン第1世代とでも言うような身体的、視覚的表現がなされていますが、エッジの際立つ彼らとは対照的な柔らかさが特徴的です。サイズも26 x 21cmと手の収まりがよく、シンプルなグレーの布張りの装丁が美しい一冊です。






実を言うと、当時はこれらの写真集の内容に対してハードカバーを用いる必然性を感じることが出来ませんでした。というのも、写真は性能の良い印刷機で質の高い紙に印刷すればするほど作品として良くなるかといえばそうではなく、ある時はチープな印刷が写真を際立たせることもありますし、また過剰に「モノ感」を強調することで作品の上澄みだけをインテリアの一部として消費されるのではないかという懸念を持っていたためです。

印刷や製本、そのような消費のされ方に関しては現在でも同じ考えを持っていますが、しかし6年が経った現在ページをめくってみると、作家の軌跡を記録したモノグラフ(作品集)として長期保存を考えるのであれば、それも良い選択なのかもしれないと思えるようになりました。大人になった、個人的なノスタルジー、と言われれば単にそれだけのことかもしれません。しかし、時代が変わっても本棚に手を伸ばせば当時の作品と記憶を振り返ることができる、写真集というメディアの素晴らしさを再確認する良いきっかけになりました。

それぞれ数年前の写真集で絶版となっておりますが、状態は大変良好です。この機会に是非どうぞ。

また、今週末の連休も営業いたします。是非店頭でもお手に取ってご覧になって見て下さい。